近畿大学大学新聞WEB版 発行:近畿大学総務部広報課 メールアドレスへ
≪第435号トップへ
学術・研究
水産研究所 世界初 クロマグロ完全養殖に成功
前人未到の成果を発表 32年の歳月 産卵に歓喜
 不可能と言われてきた「クロマグロの完全養殖」に本学水産研究所(熊井英水所長・本部ー和歌山県白浜町)が32年に及ぶ研究を重ねて成功し、7月5日、現地の和歌山県串本町・大島実験場で記者発表した=写真。
記者発表
完全養殖のサイクル
 「完全養殖」とは、人工ふ化から育てた成魚が産卵し、卵を人工ふ化、仔魚から稚魚、幼魚、成魚に育て、またその魚が卵を産むというサイクルを確立すること=図。これまで、養殖したクロマグロの卵から人工ふ化させ、成魚まで育てることには成功していたが、卵を産むには至っていなかった。

 産卵が期待できる水温が20度を超えてきた6月中旬から、日没時にいけす内でオスがメスを追いかける産卵行動が見られるようになり、ついに6月23日、待ちに待った産卵が確認され、関係者らは歓喜に沸いた。この日、採取された卵は5,000粒。その後も、次々と産卵。合計193万2,000個の卵を採取。内173万尾の人工ふ化に成功し、6万5,000尾が成長している(7月31日現在)。
 クロマグロは太平洋を横断するほど運動性が高く、体長3mに達する飼育しにくい大型魚。さらに、皮膚が弱く簡単に触れないなど、大変デリケートな魚。光や音にも過敏に反応し、夜間いけすに自動車のヘッドライトが当たっただけで、パニックを起こし、網に突っ込んで死んでしまうこともある。
いけす内を泳ぐクロマグロ
いけす内を泳ぐクロマグロ
 また、雷や台風など自然災害も魚の養殖にとっては大きな障害。昨年秋の台風では産卵を期待していたクロマグロが海上に流れ出た泥水により、視界を遮られるなどしてパニックを起こし、100尾が死ぬなど、養殖は非常に難しい。

 飼育を担当している岡田貴彦・技術主任は「気の抜ける日は1日もなかったが、人工ふ化から育て、いけすで無事成長したあの子たち(成魚)が卵を産み、完全養殖が達成されたことは何よりうれしい」と育ての親は目を細める。

 しかし、32年に及ぶ関係者の努力により「完全養殖」は達成されたが、クロマグロの安定した養殖技術の確立はまだこれから。「毎年産卵をさせるにはどのような条件をつくればよいか」「人工ふ化からの生存率をさらに高めるにはどのような手を加えればよいか」「味の良いものを育てるにはどのようなえさを与え、飼育すればよいか」など、ビジネスとして軌道に乗せ、採算ベースにできる安定したクロマグロの養殖・供給の実現への道程は長い。  

 「安くておいしい養殖マグロを供給していきたい。天然物がおいしいという既成概念を払拭するほどの養殖マグロを育てていきたい」と完全養殖を達成した喜びをかみしめながらも、熊井英水所長の目はその先をしっかりと見つめている。

【関連記事】寄航 完全養殖への道程 水産研究所長 熊井 英水
クロマグロ完全養殖までの歴史
昭和45年(1970)
水産庁の依託研究としてクロマグロの養殖・研究に着手
昭和54年(1979)
天然採捕していけす内で飼育していた5歳魚が産卵 
昭和55年(1980)
産卵
昭和57年(1982)

産卵。ふ化後57日(体重11.2g、全長9.8cm)まで飼育

平成6年(1994)
昭和62年(1987)に天然採捕した7歳魚が12年ぶりに産卵。
ふ化後246日(体重1327.7g、全長42.8cm)まで飼育
平成7年(1995)
産卵。現在6尾生残(体重110〜150kg、全長183〜200cm)
平成8年(1996)
産卵。現在14尾生残(体重70〜120kg、全長167〜187cm)
平成10年(1998)
産卵。現在30尾生残(体重30〜90kg、全長110〜160cm)
平成13年(2001)
産卵。現在300尾生残(体重2〜5kg、全長47〜61cm)
平成14年(2002)
6月23日、人工ふ化から育てた6、7歳魚20尾がいるいけす内で5,000粒の産卵を確認。ついに「完全養殖」に成功
(近畿大学大学新聞 第435号 1面 平成14年8月1日発行)
トピックス・ニュース 平成14年8月1日)
≪第435号トップへ
Copyright (C) 近畿大学総務部広報課 All Rights Reserved.